湖底

爆裂ハートフルコメディ

「まなびライン」の先にあるもの

この記事は「クソじゃないアニメ Advent Calendar 2019」6日目*1の記事です。

adventar.org

 

まなびラインとは

さて、「まなびライン」という言葉を聞いたことがありますか?10年以上前に生まれた言葉ですが、一昔前のアニヲタの皆さんならご存知でしょう。「まなび」とは2007年放送のテレビアニメ「がくえんゆーとぴあ まなびストレート」のことで、「ライン」とは、同作のDVD第1巻の売上枚数3000枚(正確には2899枚らしい)を意味します。

現在ほどネット配信や関連商品、イベントなどアニメ派生ビジネスが多様でなかった当時、オタクがアニメ作品のビジネス面における成否を語る上での絶対的な指標が「DVD*2の売上枚数」でした。その中で、「まなびライン」の3000枚は「採算ラインの分け目」として扱われてきたのです。つまり、3000枚以上売れたアニメは成功で2期が期待でき、「まなび」など届かなかったアニメはビジネス的には失敗作だったという訳です。

ただし、これらは全てオタクが憶測で勝手に語っているだけであり、本当に3000枚で採算が取れたのか、まなびがビジネス的にコケたのかなどは知る由もありません。

私はこの言葉が大嫌いでした。この言葉だけが独り歩きし、ビジネスとしての評価を語る文脈以外でも多用された結果、「まなびストレート=まなびライン=失敗作」として見てもいないオタク共に嘲笑されてきたからです。

そもそもオタクが売上枚数を盾に「覇権」だの何だのマウントを取り合う風潮自体がアホらしくないですか?売上が何枚だろうが関係なく、自分にとっての作品の評価は自分に刺さるかどうかが全てじゃないですか。まあクソアニメ愛好家の皆様には改めて言うまでもないことですが……。

 

まなびストレートとは

では、「まなびライン」の元になった「がくえんゆーとぴあ まなびストレート」とはどんなアニメだったのでしょうか。

制作はufotableで、原作の無いオリジナルアニメです。個別の「監督」という役職は置かず、ストーリーディレクターの金月龍之介、 ビジュアルディレクターの小笠原篤、 レイアウトディレクターの高橋タクロヲ、テクニカルディレクターの平尾隆之による「チームまなひ部屋」が共同で監督するという体制で制作されました。

キャラクターデザインが高校生にしてはやけに幼く見えるのは、元々中学生として企画されていたものが途中で設定変更されたかららしい。

以下、公式サイトのあらすじより。

 

価値観の多様化がさらに進んだ2035年

高校へ行くことがあたりまえでなくなった時代…

少子化が進み、生徒数の減少から廃校の危機に立たされる学校も多くなっていた。

そんな活気をなくした学校のひとつ「私立聖桜学園」に、一人の転校生が現れる。

転校生の名は天宮学美(通称:まなび)。

元気少女のまなびは、聖桜学園にどんな旋風を巻き起こすのか!?

 

ジャンルとしては学園物。近未来の設定なので若干SFめいたガジェット*3も登場しますが、基本的には現実世界の延長線上にあるお話で、「日常系」の要素も強いかもしれません。

主人公まなびの声優は2007年当時人気絶頂を誇った堀江由衣。その他、稲森光香役に野中藍、上原むつき役に井上麻里奈、衛藤芽生役に平野綾、小鳥桃葉役に藤田咲など、いずれも当時の超人気若手女性声優を揃えた強力な布陣でした。

 

リアルな生徒会

アニメに出てくる生徒会といえば、絶大な権力を誇るカリスマ的存在として描かれることが多くありますが、この作品ではアニメ的な誇張はあれど、割と現実的な生徒会を描いています。

第1話は、先代生徒会長が卒業し、書記の稲森光香(みかん)が一人取り残されたところから物語は始まります。仕方なく始業式で挨拶するみかんですが、生徒は全員居眠りしていて誰も話を聞いていません。そこに転校生のまなびが突然現れ、生徒会長に名乗りを上げることで聖桜学園は変わっていきます。

本作最大のハイライトは、紆余曲折を経て実現した学園祭のシーン(第11話「わたしにもみえるよ」)。運営本部に詰める生徒会メンバーはせっかくの学園祭を満喫することができないのですが、目を閉じ耳を澄ますと、軽音楽部のライブや模擬店の歓声など、生徒達が楽しむ様子がまぶたの裏に浮かび上がってくるのです。

これ、大学で学園祭の運営スタッフに駆り出された自分にはめちゃめちゃ刺さりました。必死こいて色々な企画を準備してきても、自分は当日の運営で全然楽しめなくて、でも盛り上がってるステージや笑顔の学生達を見ると頑張った甲斐があったなぁと嬉しくなったものです。崇高な理念を掲げたところで一般生徒がなかなか共感してくれないのもリアル。アニメに憧れて生徒会入ったけど現実は全然違った……というオタクにこそ見てもらいたい作品です。

 

曲が良い

その学園祭シーンで演奏されている曲が「桜舞うこの約束の地で」。作詞:金月龍之介、作曲・編曲:横山マサル。ボーカルは名も無き軽音楽部の生徒ですが、CVは当時アーティストとしても人気急上昇中だった茅原実里です。シンプルなバンドサウンドにまっすぐな歌詞で、王道の青春ロックになっています。2017年5月のマチアソビでキングレコードのプロデューサー氏が語ったところによると、演奏は「名前を出せない有名バンド」とのこと*4

便宜的に埋め込みしやすいサイトの試聴を貼っていますが、各サイトでハイレゾ配信されているのでぜひお聴きください。

 

 

涼宮ハルヒの憂鬱」第12話「ライブアライブ」が話題になった直後ということで、当時も比較されていろいろ言われましたが、ハルヒロトスコープ*5作画だったのに対し、こちらは竹内哲也氏渾身の一人原画で、パースを効かせたレイアウトやアニメらしいタメツメで青春の躍動感を描いています。これもキングのP氏曰く、制作中にハルヒのライブ回が先に放送されることが判明し、別アプローチの作画で勝負することになったらしい。著作権的にアレなのでここに直接掲載はしませんが、今も各動画サイトに転がってるので見てみてください。校歌のバンドアレンジも最高。

 

そして主題歌も素晴らしい。

 

OP、EDともに岡崎律子さんの名曲を親交が深かった林原めぐみさんがカバーしています。歌詞が良すぎる……。人生に大事なことが全部歌われています。映像も良い。

 

その他、ここには書ききれないくらい青春のわくわくきらきらが詰まっている作品です。リアルタイムで見たときは私自身も高校生でしたが、放送当時よりも大人になるほど刺さるポイントが増えてますます好きになっている気がします。「シナモンシュガーレイズド・ハピネス」(第6話)とか、「なつのおしまい(ばいばい)」(第7話)とか、サブタイのセンスも良い。

 

改めて言いますが、売上の数字や流行に流されず、自分が好きな作品は好きだと言い続けましょう。まなびもなんだかんだでBD-BOXが出たり10周年記念でリバイバル上映や楽曲のハイレゾ化などが実現しましたし、ファンの存在を認識させることは大事です。誰が何と言おうと俺はこのアニメが好きなんだ、という気概でオタクをやっていきましょう。

 

最近のufotableはすっかりFate専門スタジオになってしまいましたが、いつか再び「まなび」のような骨のあるオリジナル作品を生み出してもらいたいものです。「おへんろ。」二期も待ってるぞ……。

*1:更新間に合いませんでした、すみません

*2:当時ブルーレイで発売されたアニメはほとんど無かった

*3:PDAっぽい生徒手帳など。今思えばかなりスマホに近い

*4:CDのクレジットにも演奏者の表記なし

*5:実写映像のトレスで描く手法(もちろん完全なトレスではなくアレンジも加わる)