湖底

爆裂ハートフルコメディ

【試聴あり】Run Girls, Run!1stアルバム「Run Girls. World!」全曲レビュー

2017年7月のRun Girls, Run!結成から約3年、満を持して初のアルバム「Run Girls, World!」が発売されました。

これまでにリリースしたシングル6枚の表題曲や新曲6曲など計14曲を収録した、現時点でのRun Girls, Run!の集大成アルバムとなっています。

作家陣も豪華な本アルバムをぜひ全世界のオタクに聴いてもらいたいと思い、全収録曲についてレビューを書いていきます。一応お披露目から現場に通い続けているので、ライブでの感触なども交えて紹介できればと思います。

なお、1stツアーの感想ブログでも各曲の感想を書いているので併せてご覧ください(2周年ライブの感想は書きかけのまま下書きに眠っている)。

 

  

1. カケル×カケル

作詞:只野菜摘 作曲:神前暁MONACA) 編曲:広川恵一MONACA

TVアニメ「Wake Up, Girls!新章」挿入歌

ランガの原点でありアイデンティティとも言える1曲。2017年秋のショーケースイベントで初披露されたデビュー曲でありながらシングル化はされず、Run Girls, Run!名義のCDに収録されるのはこれが初めてとなります*1

「駆ける」と「掛ける」と「追いかける」を重ねた歌詞に疾走感あふれるバンドサウンドはまさにRun Girls, Run!を象徴するもの。憧れに向かって走り出した新人声優ユニットの初期衝動を具現化したような1曲です。特にDメロの「足し算よりも強く カケル3倍速でいこう 1×1×1で1つに」、天才すぎませんか?

 

2. スライドライド

作詞:只野菜摘 作曲・編曲:広川恵一MONACA

TVアニメ「デスマーチからはじまる異世界狂想曲」OPテーマ

こちらはRGRとしてのデビューシングルとなった1曲。カケル×カケルとは一転し複雑な音程に広川恵一楽曲らしく最小限のサウンドで構成され、ボーカルの歌唱力が際立つ楽曲になっています。新人ユニットに対して厳しい。それはつまり成長を測るベンチマークに最適であり、ライブではこの曲をどこまで歌いこなせるようになったかを見るのが楽しみの一つになっています。

ドラムがめちゃくちゃ格好いいので早く生バンで聴かせてほしい。

 

3. りんごの木(林鼓子ソロ)

作詞 只野菜摘 作曲・編曲 広川恵一MONACA

明るく疾走感のあるロックチューンで、
ベースラインとかドラムとかばちばちにかっこいいですよね!!

Bメロのかんじとかすごく好き。

歌っていてとっても楽しいんです。

(中略)

この曲はDメロ〜ラストの盛り上がりが聴きどころのひとつだと思うので
これはぜひ、アルバムゲットして聴いてほしいなぁ!!!

しかも絶対これ、ライブでやったらみんなで頭振って腕上げて盛り上がれる曲だと思う!!!

早くライブしたいなぁ。

歌詞もとってもすてきなの。

憧れや目標に向かって手を伸ばすんだけど、なかなか届かなくってもがいて。
でも諦めない。自分を曲げずに、真っ正面からぶつかっていく。

そういう強さや勢いを感じて、私自身背中を押される曲です。*2

ランガ初のソロ楽曲となる新曲。ロック好きで知られる林鼓子さん(18)だけに、シンプルで爽やかなバンドサウンドが印象的です。力強く透明感のある歌声を引き立てています。サビのギターが好き。

歌詞には「はやまる」「ここ」「林(檎)」と名前を表す言葉がすべて入っています。2番以降を読むと「カケル×カケル」の後日談のような趣もありますね。「翻弄しないでよ 憧れさせただけで 遠ざかってしまうなんてずるいよ」って、先輩たちのことを言っているのでしょうか……。

なぜに林檎?と思ったんですが、「欲望フレーバーのりんご」「仕掛けた罠」などのフレーズが登場し、個人的な解釈としては旧約聖書の『禁断の果実』がモチーフなのではないかと思いました。『アイドル声優』という甘い果実を口にしたことによって、原罪を背負い厳しい環境の中で生きていくことになった、その決意を歌っているというものです。解釈違いだったらすみません。

今のところ本アルバム収録曲で一番のお気に入り。ライブで聴ける日が待ち遠しいです。

 

4. キラッとスタート

作詞:古屋真 作曲:オオヤギヒロオ 編曲:陶山隼

テレビアニメ「キラッとプリ☆チャン」主題歌

2ndシングル表題曲にして、「キラッとプリチャン」シリーズ最初のOP。「やってみよう」をテーマにアイドルデビューするプリチャンの主人公たちと、デビュー直後のランガの姿が重なる素晴らしいタイアップ曲です。コール入れ放題で現時点のライブで一番盛り上がる曲。

WUGの後輩としてデビューさせ、i☆Risの後輩としてプリティーシリーズを受け継ぐという売り方、悔しいけど大正解なんですよね……。

 

5. Go! Up! スターダム!

作詞:藤林聖子 作曲:瀬尾祥太郎(MONACA) 編曲:広川恵一MONACA)、瀬尾祥太郎(MONACA

テレビアニメ「キラッとプリ☆チャン」主題歌

「カケル」「キラッと」が走り出した直後の曲なのに対し、その少し先を描いた楽曲になります。リリースごとにユニットとコンテンツの成長に合わせて楽曲も進化していくのがすごく良い。バンアパ感あるギターがお洒落*3

個人的にランガの曲の中でもかなり上位に来る好きな曲です。歌詞がめちゃくちゃ良いし、曲後半の展開がエモすぎて聴くたびに泣きそうになります。ラスサビ前の3人が手を繋ぐところ、ライブでぜひ見てほしい。

 

6. Break the Blue!!

作詞:RINA 作曲・編曲:高瀬一矢

TVアニメ「ガーリー・エアフォース」OPテーマ

ここまでほとんどMONACA一辺倒だったランガがまさかのI'VEへの発注で、楽曲派ユニットとしての評価を確たるものにしました。アルバム的にも曲調の幅が広がって良いスパイスになっていると思います。

ガーリー・エアフォースもっちーの主演作ということもあり、歌い出しやサビ終わりなど重要パートのソロを任されています。航空自衛隊小松基地全面協力で実機のF-15Jを使用したMVも必見。

余談ですが、仙台アニメフェス2019でDJ高木美佑さんがVirgin's high!→Break the Blue!!という完璧なI'VE飛行機アニメ曲繋ぎを繰り出してきて横転したことがあります。

 

7. Darling Darling(森嶋優花ソロ)

作詞:高田暁、Soflan Daichi 作曲・編曲:高田暁

高田さんの楽曲が大好きで…

ミルキィホームズさんの
ナゾ! ナゾ? Happiness!!もそうだし、
StylipSさんの
Choose me♡ダーリンも大好きだし…

挙げるときりがないけれど、他にもラブライブの楽曲でもわたしの好きな曲がたくさん;;;

こんなにかわいい曲を作ってらっしゃる高田さんにわたしも楽曲をいただけてしまうのか…!と、もうほんとにほんとに夢のようでした;;;✨

あぁ😞うれしい😞

この曲の可愛さを表現すべく、わたしも一生懸命レコーディングに臨ませていただきました❁

はやくみんなに聞いてほしいぃ~!!!ウォォ*4

ランガの「かわいい」担当を自称するもっちーだけあり、かわいさに全振りした1曲となっています。アルバム順に聴くと格好良いBtB!!からのギャップに萌えます。視聴部分にはありませんが、はやまるソロと同様、歌詞に名前が盛り込まれています。

ちなみにもっちーはRGRでデビュー前に「ミルキィホームズシスターズ」のオーディション*5や「キミコエ・オーディション」*6で最終選考に残っていました。本アルバムからディレクターを務めている木皿陽平氏*7はキミコエの審査員を務めており、本人にとっても色々な縁を感じる思い入れの強い曲になったようです*8

 

8. never-ending!!

作詞・作曲:宮崎まゆ (SUPA LOVE) 編曲:賀佐泰洋(SUPA LOVE)

テレビアニメ「キラッとプリ☆チャン」主題歌

「Break the Blue!!」との両A面でリリースされたのですが、いまいち影が薄かった本曲。YouTubeにも公式のMVや視聴動画がありません……。

でもめっちゃ良い曲なんですよこれ。昨年のRGR2周年ライブでは最後の曲として歌われたのですが、まだまだ諦めずに走り続けるぞという意思表示を感じてかなりグッときました。先輩ユニットが終わった後だっただけに尚更ね。

 

9.ダイヤモンドスマイル

作詞:古屋真 作曲・編曲:加藤裕介

テレビアニメ「キラッとプリ☆チャン」主題歌

2年目を迎えたプリチャンの主題歌ということで、キラッとスタートなどからさらに一歩進んで世界が広がっていく様子を歌っています。サビ終わりのはやまるソロ「超えて見せるから」が気持ちいい。

振付やフォーメーションも複雑になっていてランガの成長が伺えます。「らんがばん!」で振付講座があったのでフリコピのご参考にどうぞ。

 

10. 水着とスイカ

作詞:只野菜摘 作曲・編曲:石濱翔MONACA

これまでB面曲として只野・石濱コンビによって描かれてきた「四季曲」の完結編。「サクラジェラート*9」から「秋いろツイード*10」、「スノウ・グライダー*11」とどんどん進化してきた音楽性がさらに新境地に。既存曲の歌詞を台詞調で引用するの、声優ソングならではの強さがあります。

四季曲は一人の女の子の片想いを描いた連作ですが、今回はメンバー3人が口を揃えて「やっちまった」と表現する展開に。キミも来るって噂で聞いたみんなで集まる初めての海で焦ってビキニデビューしちゃった女の子がスイカ割りに臨むときの心境、あなたは考えたことがありますか?

「完結編」とは書きましたが必ずしもリリース順の物語とは限らないようで、春のあとの夏なのか、冬のあとの夏なのかなど、いろいろ考えながら聴くとさらに想像が広がります。

サクラジェラート、スノウ・グライダーの振り付けは厚木那奈美さんが担当したので、この曲もダンスでどのように表現されるのか楽しみです。

ところで永野愛理さん×やしきんの四季曲はいつ完成しますか?

 

11. 逆さまのガウディ(厚木那奈美ソロ)

作詞:只野菜摘 作曲・編曲:広川恵一MONACA

冒頭から「ななみ」に聞こえるフレーズ(not nana... meet to you)で始まるのが印象的。ゆったりとしたリズムのメロディに厚木那奈美さんの甘い歌声で抽象的な言葉が乗り、不思議な世界観の曲になっています。建築家「ガウディ」やその設計手法である「フニクラ」(逆さ吊り実験)をモチーフにした歌詞が理系のあっちゃんらしいですね。

2サビ後のラップパートや最後の逆再生音など実験的な要素もあり、曲全体でガウディ建築のような先進性・独創性を目指しているような気がします。

 

ランガちゃんもいつか、先輩ユニットのようにセルフプロデュースでのソロ曲制作に取り組んでほしいですね。

 

12. Share the light

作詞:只野菜摘 作曲・編曲:田中秀和MONACA

TVアニメ「アサシンズプライド」OPテーマ

らんがばん!にも出演された田中秀和氏による初のRGRへの楽曲提供。2019年の楽曲派界隈で最も注目を集めた曲の一つでしょう。2020年1月に開催された「アニソン派!Vol.2でもkz氏ら出演者一同が絶賛。来場者による投票で見事2019年最新アニソンアワードの10曲に選ばれました。

ランガのファンとしての印象は、とにかく3人の歌声の使い方が上手い。1サビ後のあっちゃんソロや2サビ前のはやまるソロなど、同じパートも1番2番で歌い手を変えることで変化が生まれ、それが複雑な曲構成と相まって効果的に世界観を作っているように思います。音楽素人なので上手く表現できないんですが……。「シェアする?」や「sure sure」などのセリフも耳に残ります。

キラリスト・ジュエリストとスノウ・グライダーを含めたShare the lightの収録3曲はどれも違う方向性の楽曲ながらランガの歌声の魅力が詰まっていて、素晴らしいEPになっています。

あと衣装が最高。

 

13. イルミナージュ・ランド

作詞:只野菜摘 作曲・編曲:瀬尾祥太郎(MONACA

テレビアニメ「キラッとプリ☆チャン」主題歌

新曲。瀬尾祥太郎氏は「Go! Up! スターダム!」以来の提供で、本曲もGo! Up!の進化系のような印象を受けます。随所に散りばめられたコーラスが綺麗で透明感ある仕上がりになっています。

3年目に突入したRGRとプリチャンの勢いだけではない円熟味が表れているようで、すごく気持ちいい曲です。Dメロの囁くような「天使のシューズみたいだ ねぇ みせて つばさ」が好き。

 

14. ランガリング・シンガソング

作詞:只野菜摘 作曲・編曲:廣中トキワ

本アルバムリード曲となる新曲で、「カケル×カケル」の続編といえる1曲。昨年の2周年ライブで確定したメンバーカラー*12を取り入れるなど、自己紹介ソングとしての一面もあります。今後のランガの代表曲になりそうですね。

最初に聴いたときは量産型アイドルソングっぽいなという印象もあったんですが、「好きだよ 好きだよ」「とどいて とどいて」と繰り返すサビ頭がすごくキャッチーで、一度聴くと頭から離れないパワーがありますね。3人のヴォーカルに個性と表現力があるので、シンプルなメロディでもしっかり聴かせられるんだと思います。

まだまだこれからなのに「ゴール」という単語が出てきたのには少しドキっとしましたが、声優ユニットとは儚い存在なんですよね。いつか来るゴールまで全力で走り続けるというRGRの決意を改めて歌ってくれている曲です。落ちサビの「Run Girls, Run!」、絶対ライブで叫んでエモくなるやつじゃん……。

そしていつかゴールを迎えるときは、神前暁氏に「カケル×カケル」へのアンサーソングを書いてもらいたいですね。

 

ゲーマーズ限定版特典CD

コロナの影響とはいえ、女性声優の自宅でスマホ録音された音源がCDで聴けるのって素敵じゃないですか?ちなみに音質的には全然違和感ないです。今のスマホすごい。

トークテーマは全員共通で、「自分のソロ曲について」「アルバムで一番好きな曲または思い入れのある曲(ソロ以外で)」「メンバーに会わない時間に感じたこと」「1stアルバムを経てこれから頑張りたいこと、チャレンジしたいこと」の4項目。各メンバーそれぞれの視点で楽曲の感想やレコーディングの裏話、メンバーやファンへの思いを語っています。特にメンバーへの思いは自宅での個別収録だからこそ素の飾らない言葉で話してくれているように感じて、ファン必聴の内容になっています。

 

総評

1stアルバムなので当然と言えば当然なのですが、Run Girls, Run!の歴史そのもののようなアルバムです。アルバムを通して聴くと、どんどん3人の歌声の個性が際立ってきて、またタイアップの度に楽曲の幅が広がり、ユニットとしての著しい成長を感じることができると思います。

2018年秋の1stツアーで、僕はこのような感想を書きました。

Run Girls, Run!はWake Up, Girls!直系の後輩としてデビューし、i☆Risからプリティーシリーズ主役のバトンを受け継ぎました。でもまだはっきりとした「ランガらしさ」は出せていないのかな、という気もします。しかし「何かが生まれようとしている」気配はひしひしと感じるし、このツアーを通して強くなってきたように思います。だんだん3人のキャラが立ってきて、意識しなくても自分たちの色を出せるようになってきているなぁと感じています。

あれから約1年半、このアルバムを通して「ランガらしさ」というものが見えてきた気がします。はやまるの力強い歌声を芯に、もっちーとあっちゃんのそれぞれ違うタイプの甘い声が彩るという3人のバランス。コンテンツ面ではプリチャンという軸と他作品タイアップがあり、作家陣はMONACA只野菜摘さんを中心にさまざまなクリエイターを起用するという、しっかりとした太い柱とそこからの広がりがあるのがランガ楽曲の魅力かもしれません。そしてどの楽曲にも共通して「一生懸命さ」のようなものを感じます。

コロナでホワイトデーイベントや生誕イベントが続々中止になる逆境の中、YouTubeでのソロ配信やお茶会動画など、アーティスト面以外の個性や魅力を発信する取り組みにも力を入れています。3年間追ってきた私が見ても今のランガが一番面白いと思います。

夏の3rdツアーが予定通り開催されるか不透明な状況ではありますが、開催された暁には、本アルバム収録曲も最高のパフォーマンスで届けてくれることでしょう。今のランガのパフォーマンスは同世代の声優ユニットの中でもトップレベルにあるし、もっと大きな舞台に立てる実力があると自信を持って言えます。このアルバムを聴いて、少しでも興味を持った方は、ぜひ一度Run Girls, Run!のライブを見に来てください。夢へのバトンを一緒につないで走りましょう。

 

f:id:koteijing:20200523191719j:plain

サムネイル用

 

*1:2017年10月にアニュータで先行配信開始、2018年3月発売の「Wake Up, Best!3」で音源化。

*2:月曜日のはやまる143٩( 'ω' )و | Run Girls, Run!オフィシャルブログ Powered by Ameba

*3:本アルバム未収録の「キラリスト・ジュエリスト」にもバンアパの「beautiful vanity」をリスペクトしたフレーズがある

*4:アルバムが決まったよ❁(•ө•)ゆうか | Run Girls, Run!オフィシャルブログ Powered by Ameba

*5:合格したのは同い年で京都出身の伊藤彩沙

*6:合格者はNOW ON AIRとして2016年デビュー

*7:WUGやRGRの音楽担当プロデューサーだった村上貴志氏のエイベックス退社に伴う後任?

*8:Run Girls, Run!の3人4脚自由形#11より

*9:「スライドライド」収録

*10:「Go! Up! スターダム!」収録

*11:「Share the light」収録

*12:林:赤、森嶋:オレンジ、厚木:水色