湖底

爆裂ハートフルコメディ

なぜWake Up, Girls!は“エモい”のか

元号が変わり、令和の御代を迎え1ヶ月以上が経った今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。僕は相変わらず、平成日本にかつて存在した声優ユニットのことを毎日考えています。元メンバーが出るイベントに足を運ぶ度、顔見知りのワグナー達と3月8日の遺品である草ブレードを持ち寄って想い出話に花を咲かせています。

 

この3ヶ月間、ずっとWake Up, Girls!を総括する文章を書こうと考えていました。ファイナルライブの感想は書きましたが、僕がこの数年間全力で推していた理由は何だったのか、WUGの魅力とは何だったのか、改めてまとめる必要があると感じました。

 

しかし、いくら考えても答えが出ないのです。彼女達の魅力を簡単な文章に落とし込むことなんて不可能でした。そう、まさにファイナルライブ「想い出のパレード」の公式サイトにあった紹介文のように。

 

──アンコールが鳴り止まない。

 

Wake Up, Girls!(ウェイクアップガールズ)は、
2013年から2019年3月まで活動した声優ユニット
メンバーは、吉岡茉祐永野愛理、田中美海青山吉能山下七海奥野香耶高木美佑 の7人。

 

ステージ上で魅せるライブパフォーマンスを、単純な一言で飾るのは勿体無い。
ユニット名を叫ぶアンコールは、いつもライブで鳴り止まなかった。


──そのくらいの話だっていい。
それでも私達はその日の7人を誰かに伝えていこう。
みんなで過ごしたその瞬間。
想い出のパレードを。*1

 

でも敢えて、WUGをこれ以上なく簡単で陳腐な一言で表現すると、「エモい」。

この言葉に尽きると思います。

 

 

WUGに数々の楽曲を提供してきた広川恵一氏もこう仰っています。

しかしこの「エモみ」は昨今多用されるような安っぽい意味合いではありません。

 

 

“二つ以上の相反する感情が複雑に混じり合った結果生まれる焦燥感や哀愁”

 

これです。これこそがWUGちゃんを見て感じる特別な感情なのだと、このツイートを見て理解しました。

 

他のアーティストのライブに行って高まることはあれど、腕を振ることもできず呆然とステージを見つめることしかできなくなったり、ライブ後に感情が溢れ出してため息しか出てこないような状態になったりしたのはWUGだけでした。

 

ただ「楽しい」「可愛い」だけじゃない、複雑な感情の巨大な集合体。それは解散発表前から感じていたものですが、あの2018年6月15日以降は輪をかけて強くなりました。

 

なぜ、Wake Up, Girls!はこんなにもエモいのか。その理由は、彼女達の一筋縄では行かない、紆余曲折に満ちた6年間の道のりにありました。

ここで6年間どれほど逆境に次ぐ逆境だったか書こうかと思いましたが、どれだけ書いても書ききれないし野暮なのでやめておきます。ただ一つ言えるのは、それを乗り越えてきたからこそ、7人の絆は最強と呼ぶに相応しいものになったのだということです。

その姿が、アニメ劇中で何度も挫折を味わいながらも輝こうとするキャラクター7人にも重なって、エモーショナルな感情が生まれてくるのです。

  

また、楽曲もその魅力を最大限に引き出してくれました。

 

奥野香耶さん(以下、奥野):7人で激しくダンスをして、雰囲気もすごく楽しそうなんだけど、どこか儚さがあるというか。明るい中にそういった影みたいなものが見え隠れするのが、『WUG』の楽曲っぽさなのかもしれないなって思います。

(中略)

ーー哀愁感というか、そういったものでしょうか?

田中*2:哀愁という言葉では必ずしもないのですが、作曲家としての演出意図としてそのポイントはあります。曲で人の心をどう動かすのか?ということを常に踏まえながら、作っていますので。奥野さんが仰ったように僕たちは『WUG』の楽曲について、「ただ明るいだけの曲」を制作していないのは事実です。

僕たちが『WUG』の曲を作る時に、聴いてくれている方たちを「明るいだけの気持ちに引っ張っていく」ようにしないことが、『WUG』の楽曲らしさにつながっているのかもしれませんね。どう?合ってる?

広川:合ってると思います。エモみってことですかね?

田中:エモみって言うと、急に俗っぽくなるね(笑)。

広川:感情の熱さというか。そういったところはありますよね。*3

 

そして、東北への想い。ただのアニメ聖地以上に重い意味を持つ土地を背負って、彼女達は活動を続けてきました。

 

 

 

アニメキャラを背負ったユニット、ビジュアルが可愛いユニット、曲が良いユニット、歌が上手いユニット、ダンスが綺麗なユニット、仲が良いユニット、東北に向き合ったユニット、挫折を味わったユニット、大人に裏切られたユニット、最後に夢のステージへ辿り着いたユニット……

 

それぞれ個別の要素を見れば、他にも同様の声優ユニットやアイドルグループはたくさんいるのかもしれません。でもこれらや、ここには書ききれないくらいたくさんの要素が相互に複雑に絡み合って生み出されるものが、WUGの「エモ」でした。そのどれか1つでも欠けていたら、3月8日の光景はまた違ったものになっていたのかもしれません。

 

そのファイナルライブ「想い出のパレード」のBDが間もなく発売されます。

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【Amazon.co.jp限定】Wake Up, Girls! FINAL LIVE 想い出のパレード (特典:ブロマイド) [Blu-ray]

 

中にはこの円盤で初めてWUGちゃんを見るという人もいると思います。全然WUGを知らなくても、初見で純粋に楽しめるライブ映像になっていることは間違いないでしょう。

でも、もし今からでもWUGちゃんを「良いな」と思ってくれたなら、少しでもWUGのパフォーマンスに「エモみ」を感じたのなら、その背景にあるアニメと6年間の出来事をぜひ遡ってみてください。

 

Wake Up, Girls!は知れば知るほど面白くなるコンテンツです。彼女達の6年間の歩みに目を向けることで、楽曲やライブ映像はどんどんエモみを増していくはずです。

 

 

※この記事は「トキノドロップ」さんのWake Up, Girls!記事連続投稿企画「はじめましてのパレード」に参加しています。

 

tokinodrop.tokyo