湖底

爆裂ハートフルコメディ

コロナ禍のライブで、オタク達が勝ち取った"本物のアンコール"

 

2022年9月25日、声優ユニットRun Girls, Run!の5周年ライブツアー「Get Set, 5!」の千秋楽、東京・品川インターシティホール公演が終了しました。

 

 

 

ライブ全体の構成やセットリストは前回感想ブログを書いた仙台公演、大阪公演とほぼ同じなので割愛。

ただ、この日はツアーファイナルということもあり、特に夜公演は明らかに会場のボルテージが上がっていた。

 

アンコールラストの「無限大ランナー」を歌いきった後、最後の挨拶を終えた厚木那奈美さん(あっちゃん)、林鼓子さん(はやまる)、森嶋優花さんもっちー)の3人が盛大な拍手に送られてステージを去る。客電が点き、規制退場を促すアナウンスが流れ終わると、改めて3人を称える拍手が湧き起こり、それは鳴り止むことなく、そのまま手拍子へと変わっていった。

 

そう、この日のランナー*1達の高まりきった熱気は、たった1回のアンコールでは冷めやらなかった。

 

ただ僕の経験上、コロナ禍に入ってから予定外のWアンコールが成功した例は他アーティストの現場を含めても無い。スタッフがPA席から慌てて舞台袖に駆け込んでいったが、しばらく経っても客電は点いたままで、本当に再登場するのか半信半疑のまま手を叩き続けた。

 

そのまま数分が過ぎ、(ダメなら早く追い出しアナウンスしてくれ……)と思い始めたころ、ついに客席が暗転する。

 

そしてステージに現れる3人。ランナーの思いに応えて再登場してくれたことだけで僕は満足で、一言挨拶して退場したとしても全然嬉しかった。

 

しかし次の瞬間僕の耳に届いたのは、この5年間で数えきれないほど聴いてきたギターの音色。

 

 

Run Girls, Run!の始まりの曲、「カケル×カケル」。まだ声出し禁止ではあるが、オタク達の口から漏れた悲鳴にも似た叫び声が客席のあちこちから湧き起こる。

 

この曲はライブ本編ラストでも歌われているので、本公演では2回目の披露となる。本編では振付を完璧に踊りながら歌っていたけれど、ここはもうセットリストの外の世界。メンバー3人は自由にステージ上を駆け回り、客席を煽りながら伸び伸びと、心から楽しそうに歌ってくれた。

 

ランナー達もそれに呼応し、昼夜2公演目の最後の最後であるにもかかわらず、誰もが全力でクラップし、全力で飛び跳ねていた。昨今はちょっと身体を揺らしただけで「お気持ち表明」されたり、コロナ禍でジャンプ禁止になったりしたライブが増えているが、この瞬間の品川インターシティーホールには紛れもなく「平成」の声優ライブの光景が広がっていた。

 

再登場の直後からリーダーであるもっちーの目は明らかに潤んでいて、2番のあたりだったか、その様子に気付いたはやまるあっちゃんが駆け寄って抱き寄せる。

 

 

見覚えのある姿だった。

 

 

©アニメイトタイムズ/ANIMATE CORPORATION

 

今から4年前、Run Girls, Run!初めての単独ライブとなった1stツアー大阪公演のラスト。持ち曲が少なく、カバー曲も交えて披露したセットリストで、アンコールは本編1曲目と同じこの「カケル×カケル」だった。

まだ慣れないダンスから解放され、肩を寄せ合いながら自分たちにとって初めてのオリジナル曲を心底楽しそうに歌い上げる姿を見て、この3人をずっと追いかけて行こうと決心したことを昨日のことのように思い出す。

 

時は経ち、ついに解散というゴールが決まった今、改めてこの光景に出会えた奇跡。3人を信じて走ってきたこの5年間が正解だったことを確信し、こみ上げるものがあった。

 

 

感動と熱気に包まれたまま、歌は2サビを終え、いよいよクライマックスへ。

この曲には約20秒と長めの間奏がある。笑顔で客席に手を振る3人を眺めながら気持ちを高めていると、

 

 

森嶋「足し算よりも強く~」

 

 

!?

 

 

まだ間奏半分しか終わってませんけど?しかもそこは林さんのパートなんですけど?

 

顔を見合わせる3人。崩れ落ちるもっちー

「ゴンッ」とマイクが床に当たる音が響き、客席からも笑いが起きる。

 

 

最高。

これぞライブの醍醐味だ。神懸かり的な展開にニヤニヤが止まらない。

 

 

爆笑しながらも気を取り直して歌い直す3人。客席の一人一人と目を合わせるように、縦長のホールの最後方まで見渡してこの光景を目に焼き付けているようだった。

ラスサビ~アウトロでは客席の全員がマサイ族と化していた。

 

 

奇跡のような時間はあっという間に過ぎ、3人は改めて感謝の言葉を述べ、ステージを去った。

 

再び客電が灯った後、会場内に響き渡る万雷の拍手。僕は会場を出た後、顔見知りのオタク全員と抱擁を交わしてお互いを称え合った。

 

 

俺達は勝ったのだ。勝ち取ったのだ。

本物のアンコールを。本物のライブを。

 

 

「アンコール」の意味

 

 

メンバー、関係者のツイートからも、このWアンコールが完全に予定外だったことが伺える。

 

そもそも、アンコールとは本来ライブ本編ではなく、客の求めに応じて行われる追加演奏である。求められなければやる義務は無い。

 

だが、いつしかアンコールを行うことは定番となり、ほとんどセットリストの一部として予め構成されたものになっているのが実情だ。それどころか、以前参加した某コンテンツのライブでは本編終了後に出演者側からアンコールを煽る映像演出があって閉口した。まあどうせやるし準備するのは当然としても、大原則は崩さないでくれよと。

 

さらに言えば、客側もそうした状況に飼い慣らされている。コロナ前の声出しができた時代でも適当に手を叩くだけで声を出さないやつは大勢いたし(別に出てきてほしくないならそれでいいが)、逆に本編終了後に間髪入れずにアンコールを始めるムードぶち壊し野郎も大勢いた。まずは本編に対する礼を尽くしてから、それでも物足りないから求めるのがアンコールだろう。

 

だから僕はコロナ前、本編が終われば(内容が良ければ)まずしっかりと拍手を送り、軽く休憩しつつ全力でアンコールを叫ぶ、ということを心掛けていた。正直しょうもないな、と思ったライブでは黙って座っていることもあった(アンコール見ずに帰るほどの覚悟は無いのがダサい)。

 

 

西川貴教大先輩もこう仰っているように、本当に熱が冷めやらず、もう一度見たいのであれば何度でも求めていいのがアンコールなのだ。

 

実際、僕がこれまで参加したライブでもツアー千秋楽などの特別な節目(この場合は演者側がWアンコールを想定していることも多い)や、別に節目でもないのに異常に盛り上がった回*2で予定外のWアンコールを引き出したことがある。

 

しかしコロナ禍以降は声出し禁止になったこともあり、一瞬手拍子が始まりかけても退場アナウンスにかき消されて自然消滅してしまうのが常だった。だからこそ、今回もツアーファイナルと言えど運営側は2回目を想定していなかったのだろう。

 

それでもランナー達は負けなかった。一度帰りかけたオタクもほぼ全員戻って加勢してくれた。5分くらいは手を叩き続けただろうか。ついに勝利の時が訪れたのだ。

 

翌日に放送された「Run Girls, Run!のらんがちゃんねる」で語られた裏話も総合すると、この間に3人で曲を決め、PAシステムを再起動し、曲を流し始めるタイミングなどをスタッフと詰めて再登場に至ったとのこと。ランナーの熱意に応え、想定外の事態にも全力を尽くしてくれたメンバーとライブスタッフに心から感謝。カケルという選曲も完璧だった。

 

そしてDメロでのもっちーのミスも良かった。いや本人的には良くないかもしれないけど、感情が昂ったが故のミスだからこれでいいのだ。

 

LIVE=生。予定調和のコンサートではなく、ステージ上と客席が呼応し合って生まれる唯一無二の空間。それをこのコロナ禍の時代に勝ち取ったRun Girls, Run!の3人とランナー達を誇りに思う。

 

 

もう一度、奇跡を起こしたい

 

今回の公演では、Run Girls, Run!として最後のライブが告知された。

 

このツアー開幕直前に発表された、2023年3月末での解散。5年という節目を迎えたこともあり、個人的にはそれ自体には納得というか、受け入れつつあるというのは以前このブログの記事に書いた通り。

 

問題は、どう終わるかだ。

 

Run Girls, Run!として掲げていた目標は武道館だった*3。ただ、過去の動員実績は最大で700~800人程度。今回の品川インターシティーホールもほぼ満席だったとは言え、約700人。

 

正直なところ武道館は厳しいなぁと思いつつ、せめて1000~2000人規模で、できればプリティーシリーズのライブで縁のある中野サンプラザあたりでファイナルを開催してほしいと思っていた。

 

しかし、発表された会場を聞いて愕然とした。

 

 

 

「2023年3月25日、山野ホール

 

 

 

山野ホール - YAMANO HALL

 

なんてことはない、定員800席のホールである。というか、昨年12月に開催されたRun Girls, Run!4周年ライブの会場だった箱だ*4

 

その4周年ライブの最後の挨拶で、森嶋優花さんは「もっと大きくなりたい!!ランガとしてもっと大きいステージにみんなを連れていきたい!」と宣言していたのだ。

 

無謀なほど大きい箱を用意しろとは言わないが、これはあんまりじゃなかろうか。

ランナーの期待も、メンバーの想いをも踏みにじるような会場選定には疑問しかない。

 

演者側も無念さを抱えているのか、発表は映像で大々的に行われることもなく、林鼓子さんが紙を読み上げる形で、それもどこか微妙な表情をしながら淡々と読み上げる姿が印象的だった。客席は一瞬シーンと静まり、その後一応拍手が湧き起こるという感じだった。

 

その悲しみや憤りを抱えたまま前述の奇跡のようなWアンコールを迎えてしまったため、もうオタクの情緒はグチャグチャである。終演後のランナーのツイートはほぼ全員が感動と呪詛の言葉を交互に垂れ流している状況だ。

 

もちろん会場側に罪は無いし、どんなステージであってもこのメンバーなら光り輝けるに違いないのだが、5年間、コロナの荒波に揉まれつつも頑張ってきたユニットの最後の晴れ舞台としてはあまりにも華が無い。さらに昼夜2公演回しというのもセンスが無い。最後はドカンと一発デカい花火をブチ上げて終わるのが粋ってもんでしょうが。

 

第一、この5周年ツアーファイナルで最高最強のライブを演じてしまった以上、ここにいた700人はもう3月25日に全員来ることが確定しているのだ。その上解散ブーストで今まで来ていなかったオタクも集まることを思うと、明らかにキャパが足りない。エイベックスは一体何を考えているのか。

 

文句を言えばキリが無いのだが、既に最速先行が始まっている(10月3日まで)。

 

 

こうなったら、もうエイベックスがビビるくらい応募するしかない。明らかにキャパオーバーの申し込みが来たら運営側も気が変わるかもしれない。まだあと半年あるし。

 

ということなので、この記事を読んで少しでもランガに興味を持ってくれた方は、ぜひ来年3月25日の予定を空けて、チケットを申し込んでください。まあ仮に会場が変わらなかったとしても、Run Girls, Run!は最高のパフォーマンスを見せてくれるはずです。

(もちろん行く気が無い人は応募しないでくださいね。それはただの迷惑行為なので)

 

 

 

思えば、Run Girls, Run!は「諦めずに挑戦すること」「挑戦すれば夢は叶うこと」を歌い続けてきた。

 

止まらない

あきらめるほうが ずっと苦しいのなら

駆けるよカケル駆けるんだ

だってだって 追いかけたいんだ

(「カケル×カケル」)

 

キラッと あこがれキラキラ 叶えるチャンスだよ

夢を咲かせられるプリチャン

世界中をハッピーで繋げよう

信じて やってみよう

キラッとスタート

 

Yes! 不可能なんかない

キミとの未来があれば

ジレンマなこの日々もサバイバル

信じていいよね 運命変えられること

ほんの一瞬 ツラかったねって笑おう

もう デタラメな夢じゃない

Believer Switch

 

悪あがきかもしれないけど、まだ夢は叶えられる、運命は変えられると信じて、最後の半年間を駆け抜けていきたいと思う。

 

 

*1:Run Girls, Run!のオタクの呼称

*2:自分が参加した中では鈴木このみ3rdツアー大阪公演、Wake Up, Girls!HOMEツアー岸和田公演など

*3:ランガリング・シンガソング」のMV等で公言。なお「日本武道館」とは言っていないので「東京武道館」等だった可能性もある

*4:4thではコロナ対策で1席空けの座席配置