2020年1月15日、「Wake Up, Girls!Solo Collection -7 Stars- 」が各音楽配信 サイトで配信開始されました。かつてWake Up, Girls!オフィシャルファンクラブ(わぐらぶ)で限定販売されたソロ曲14曲に初音源化の1曲を加えた15曲で、待望の一般販売となります。
これらの楽曲は、2017年と2018年に開催されたFC限定ソロイベントに向け、各メンバーが自身で考案したコンセプトに基づき、名立たるクリエイターを指名して発注する という非常に贅沢な取り組みによって生み出された楽曲群です。
イベント会場とFC内通販限定で販売されたパンフレットには、ソロ曲の音源を収録したCDが付属。またクリエイターによるライナーノーツが掲載されており、メンバーからどのようなコンセプトで発注を受けたのか、それに対してどのように応えたのかが語られている貴重な資料です。しかし一般流通していない品のため、中古品も価格が高騰しています。
2017年と2018年のソロイベパンフレット
今回ソロ曲が一般に解禁されたことは大いに喜ばしく、今後新たに7人のファンになる人も含めて、一人でも多くの人に聴いてもらいたい名曲ばかりです。しかし、ただ音源を聴くだけでなく、これらの曲が生み出された背景を理解することで、楽曲やメンバーの魅力をもっと知ってもらいたい。そこで、パンフレットをそのまま掲載することはできませんが、ライナーノーツを参照しつつ、メンバーのブログ等での発言なども交えて可能な限り各ソロ曲を深堀りしていくというのがこの記事の主題です。
まあこんなブログを読まなくても、もっと信頼できる人物が的確に解説してくれてるのでまずはそれを見てください。
ここからはオタクの駄文を読みたい暇な人向けです。
以下、アルバム収録順*1 で解説します。
M1. てがみ / 吉岡茉祐
作詞:吉岡茉祐 、作・編曲:加藤裕介
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吉岡茉祐 さん自身による作詞。原型は、3rdツアー期間中に亡くなった祖父に宛てて書いた手紙です。一部を引用するよりも、吉岡さんのブログを読んでもらった方が想いが伝わると思うので、該当する記事を貼っておきます。
加藤裕介 氏のコメントによると「アーティスト『吉岡茉祐 』として自身の言葉を爽やかなポップソングに乗せて表現したい」というリクエス トだったそうです。レコーディングでは「今できる最大限の表現を目指して何度も納得ゆくまで歌ってもらった」とのこと。
上記のブログにもありますが、楽曲という形に落とし込むことで「祖父への手紙」から普遍的なメッセージへと昇華したものになったのではないでしょうか。翌年のソロイベは3月11日に福島県 郡山市 で開催されましたが、東北にとって特別な日に歌われた歌声はとても優しく、また違った意味を持った曲に聴こえました。
M2. Why am I / 奥野香耶
作詞・作曲・編曲:すこっぷ
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すこっぷ氏曰く「別れがテーマの少し暗めなところから始まる曲ですが、最後はそれを乗り越えていこうと少しだけ前向きな気持ちになろうとする曲」で、「儚い曲調だけど訴えかけるような曲がいい」とのリクエス トだったとのこと。
なんとなく青みがかった日に、家で何もすることがない時、エンドレスで流していても心の中をスーッと通っていくような、そんな曲が歌いたくて。
ただ、心地よい中にも違和感を残したくて、 雨の音や、時計の音、少し不可解な音を入れて欲しいなどの、お願いをしました。*2
大サビっていうのかな..?
「ねぇどうして、ねぇどうして、ねぇどうして」
の部分の前のドラムとか楽器が切なくも激しい音を奏でているところ、いつも大音量で聴いてる。
そう、そうなの。 最大の音量でイヤホンして耳を塞いでも、耳が痛くならない、むしろ直接訴えかけてくるような、心抉る音。
こういう音楽大好き。*3
奥野香耶 さんの抽象的な世界観、大好きです。
M3. ももいろDiary♡ / 山下七海
作詞:こだまさおり 、作曲:⼭⽥⾼弘
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楽曲のイメージは、山下七海 さんが初期のWUGブログで連載していた「ももちゃん物語」*4 。「ももちゃん」とは、ななみんが3歳のときから一緒にいる手作りのうさぎのぬいぐるみで、ななみんのサインのモチーフにもなっています。
「ももちゃんをテーマにした曲」とのオファーを受けた山田高弘 氏は「ももちゃん物語」を読んで作曲に取り組み、さらに「ももちゃん物語の素晴らしい世界観は、ぼくの作詞では引き出せないかもしれない」との考えでこだまさおり 氏に依頼したそうです。この山田さんのライナーノーツがめちゃくちゃ面白いので何とかパンフ入手して読んでもらいたい。レコーディングに使用したマイクは、山下さんの声に対し「乾いた感じの中にも切なさがある」NEUMANN U67と「全てを包み込むような暖かみのある」SONY 800Gを比較し、切なさのU67を選んだとのこと。こんなマニアックな話が載ってる女性声優イベントのパンフレットある?
こだまさおり 氏は「この物語を歌詞でファンタジー にしてしまわないよう、幼くなりすぎないように気をつけましたが、(中略)とっても可愛らしい歌声のなかに等身大の瑞々しい誠実さが佇んでいて、最終的にグッと世界観を引っぱりあげていただいたと思います」と記しています。
M4. Trouble⁉ Travel / 田中美海
作詞:RUCCA 、作曲:Evan call
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田中美海 さんと作詞作曲の両氏とは、TVアニメ「シュヴァルツェスマーケン 」のキャラク ターソングからの縁。RUCCA 氏は「夢を冒険に喩えて欲しい」とのオーダーに対し、「声の表情が豊かな歌になるように、夢への『期待』も『不安』も色んな感情を詰め込んで」歌詞を書いたとのこと。またEvan氏は田中さんに合う「楽しくて明るいヨーロッパ民族系アニソン」として「盛り上がっている民族フェスティバル」をイメージして作ったそうです。
ライブではサビラストの「ホイ!」や2サビ後のコーラス*5 をみんなで合唱して盛り上がりましたね。余談ですが、秋田ソロイベのみにゃみの衣装がマジで可愛かった。
今回のソロイベ曲、 「Trouble!?Travel」、本当にお祭りみたいで 皆さんも歌ってくれてすごく嬉しかったです! ただ楽しい曲というわけではなくて、 トラブルだって、失敗だって、夢のカケラ … うん!!そうだよね!!!って 歌いながら妙に納得してて、 すごく楽しく歌うことができました♪*6
M5. now is the time - 高木美佑
作詞:柚子乃、作曲:高瀬一矢
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I'veさんですよーーーーー!!!!!!!(鼻血) 私、全く接点もないただのファンだったのに、まさかの、快くOKを頂きました! 本当にいろいろな方に感謝です🙇🏻♀️🙇🏻♀️🙇🏻♀️
now is the time は、前回のHELP ME!みゅーちゃん!とは打って変わって、カッコイイ曲にしていただきました!! びっくりしたかなぁ…??
普段みんなが思う私からは、あまり想像できないだろう私を表現してみよう!と思い、 思い切って挑戦をさせていただきました🙏☺️
たくさん聴いていただけたら嬉しいです♪*7
過去のソロイベでも「Virgin's high!」や「JOINT」をカバーした生粋のI'veファンである高木美佑 さんが満を持してI've札幌スタジオで収録した1曲。WUGでは岡本未夕のキャラソン など、キュートな曲をメインで歌ってきましたが、一転して格好良い曲に。ソロイベ2018の黒基調のビジュアルともマッチしていました。
詞は「自由に生きたい」をテーマに、曲は「『Wing of zero』(KOTOKO )のような感じ」というオーダーだったそうです。安定のエロゲ曲チョイス。
M6. 解放区 / 青山吉能
作詞:こだまさおり 、作曲・編曲:広川恵一 (MONACA )
Drums:渡部宏生
Bass, Guiter &Programming:広川恵一 (MONACA )
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「青山吉能 さんの歌を聞いてください」(広川恵一 氏)
今回のテーマは応援歌。
『わたしが歌う、わたしに向けた』、そんな応援歌です。 ちょっと暗い。でも明るい。 だからフレー!フレー!🎉って感じではないんだけど。笑 なんでこのテーマにしたかはソロイベでお話しますね。忘れたらめんご
ど直球でばか正直なわたしらしく歌わせていただきました。
そう! 今回、初めてドラムの収録やTDにも立ち会わせていただいたんです。 曲が出来上がる過程や、音がかけ算になっていくところを間近で見て、 うまく言葉にできないけれど、 曲って歌だけじゃなくて、 こうして音がたくさんたくさん重なってできてて、 どれが欠けてもだめなんだなって心から思いました!
この曲はきっと、歌うときの心持ちで全然違う歌になると思います。 ライブで歌うときはどんな曲になるだろう。 どんな気持ちで、どんな顔で、どんな声で歌ってるかな。 楽しみです!!
聞いてくれた一人一人のどこかに、ぽっと残るような曲になりますように。*8
青山吉能 の、青山吉能 による、青山吉能 のための応援歌。「THE 青山吉能 」という楽曲です。より具体的には「全員に共感してもらえなくていいから七割自分向けに、その先で何かしら共感してくれた人への応援歌になるといいな」というオーダーでした。
ちなみにソロイベ青森公演は最も遠い会場で、当日は大雪だったこともあり、現地に行けなかったファンのためにこの曲だけ動画撮影・アップロード可能という措置がとられました。YouTube に観客が撮影したライブ映像が上がっています。
未来はいつだって無限の解放区。可能性に挑戦し続ける青山吉能 さんを応援しています。
M7. minority emotions / 永野愛 理
作詞・作曲・編曲:やしきん
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永野愛 理×やしきんによる桜ソング第二段。テーマは秋に咲く季節外れの桜。「秋に桜が咲いてもいいじゃないか、人と違ってもいい、自分らしく強く負けないで頑張ろうという応援ソング」というオーダーでした。
あなたならどうやって笑うかな
あなたならどうやって泣くのかな
オレンジの中にひとつだけ光る
鮮やかさに目が離せない
桜ならどうやって歌うかな
桜ならどうやって咲くのかな
自分らしさから 生まれた景色を
信じて 感じて 愛して
それでいいんだよ
この歌詞がまさに永野愛 理さんの優しさ、そして自身の個性を信じて進んでいく決意を表していると思います。音楽面でも、切ないピアノの音色から始まり、次第に盛り上がっていくバンドサウンド 、そして2サビに行かず間奏を経て落ちサビに至る構成はエモーショナルとしか言いようがありません。願わくば、あと夏と冬の桜ソングを制作して永野愛 理×やしきんの四季を完成させていただきたいものです。
M8. あのね / 奥野香耶
共作詞:anemone* / 古屋真 、作曲・編曲:重永亮介
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奥野香耶 さんのソロイベ2018は、奥野さんが「声優・カヤ」を演じ、観客が「先輩」役となるドラマ形式で行われました。昼の部でカヤと先輩は結ばれ、終演後にはカヤからのラブラブ電話風ボイスメッセージが参加者に届くという仕掛けもあり、昼の部を終えたオタクは全員ガチ恋 に。しかし夜の部では、声優としての自分ではなく素の自分を見て欲しいカヤは先輩に「イベントには来ないでほしい」と告げるも、先輩は我慢できずに行ってしまい……。終演後、参加者に届いたカヤからのメールを開いたガチ恋 オタクは全員息を引き取ったそうです。
そんなソロイベで歌われた曲ということもあり、1番と2番で大きく変わる二面性を持った楽曲になっています。古屋氏の言によれば奥野さん提案のコンセプトは「“些細なすれ違い”“言いたいけど言えない”を歌にしたい」だったそうです。出会いと別れを歌い分ける奥野さんの表現力が素晴らしい。どちらが本当の奥野香耶 さんなのか、どっちもなのか。ソロイベの物語はどこまでがフィクションでどこまでが本心なのか……。考えれば考えるほど深みの出る1曲です。
重永さんは、中島愛 さんの、空色ラブレターや、天使になりたい、今回昼公演で歌ったShining onも好きなので、もう絶対お願いしたい〜!と思いました。
そして、私、中でも「white heart rhythm」が1番好きで、 女の子の繊細な、可愛いけど、もどかしい気持ちを表現していただくには重永さんと古屋さんがぴったりだ…!と思いました。 そこに今回、anemone*さんも加わっていただき、「あのね」が完成致しました。
あぁいう系の曲調大好きなんだよ〜〜ミスチル の幸せのカテゴリーとか、椿屋四重奏 の小春日和、的な。
あのねは、一曲の中で季節が移り変わっていきます。 その中で変わっていく2人の心情が切ない..。
新幹線に乗り、過ぎて行く景色を眺めながら聴きたくなる曲になったらいいなと思います。*9
M9. 狐草子 / 田中美海
作詞/作・編曲:ゆうゆ
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私は「狐草子」という曲です! 作詞、作曲は中学の時から楽曲を聴いていて大好きだったゆうゆさんにお願いしました! 私の拙い言葉を上手く掬いとってくださって めちゃくちゃかっこいい和ロックに仕上がりました〜〜! なかなかに新鮮なのではないでしょうか・・・! 狐の悲しい哀しい恋模様を描いております。*10
ボカロ曲チックな和アニソン。まさに千本桜とかで育ってきた世代ですからね。田中美海 さんの歌声とよくマッチしています。打ち合わせでは「“和風”“悲恋系”といったワードが感じられる曲で是非」というオーダーがあったそうで、ゆうゆ氏曰く「凛として力強い田中さんの一面と、僕自身の持ち合わせている好きなメロディの形やケモノっぽい要素を真っ向からぶつけて生まれた意欲作」。
M10. 七つの海のコンサート / 山下七海
作詞:こだまさおり 、作曲:田中秀和 (MONACA )
Guitar:堀崎翔、Programming:田中秀和 (MONACA )
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山下七海 さんからのリクエス トは「海のイメージで」。それに対し、田中秀和 氏はさまざまな海に思いを巡らせた挙句、ふと「海」が名前の一文字であるという自明の理に立ち戻り、「山下七海 のキャラソン を作ろう」という着想に至ったとのことです。作曲に際しては「斜に構えない、小手先のギミックに頼らない、しっかりと地に足の着いた、誠実なメロディーを書く」ことを心掛けたそうで、「山下さんのキャラク ターと声の魅力を生かす方法として、それが最善策であると確信していた」とのこと。
こだまさおり 氏は作詞期間中に海の見えるホテルに滞在し、「太陽を映してキラキラまぶしい水面を見ながら、そこにいる山下さんをずっと思い浮かべ」、かつてイルカと泳いだことがある*11 山下七海 さんの姿からイメージを膨らませて書かれたそうです。
余談ですが、山形でのソロイベにはゲストとして田中秀和 氏とDeNA の岡村直哉氏*12 を招き、ライブハウス内で山下七海 さんが手料理(そば米汁とスタミナ豚キムチ 厚揚げ丼)を振る舞うという謎の企画が行われました。
M11. GloriA / 吉岡茉祐
作詞:吉岡茉祐 、作曲:渡辺翔 、編曲:オダクラユウ
Guitar, Bass, Programming:オダクラユウ
Drums:山内“masshoi”優
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作曲は、な、、、なんと、、、!渡辺翔 さん!!!!! そして作詞は、今年も吉岡がやらせていただきました。 私の歌詞が、渡辺翔 さんの曲に乗るなんて…oath sign だよ?!だってアタシのヒーローだよ?!コネクトだよ?!?! 死ねる。 今回は超絶カッコいいロックに挑戦しました。
LiSAっ子の吉岡茉祐 さん念願の渡辺翔 氏からの楽曲提供。跳びポが最高に気持ちいいゴリゴリのロック。人類はGloriAで跳ぶために二足歩行能力を獲得したというのが私の持論です。Dメロの「BREAK」「BEAT」「SHOUT」は力一杯叫びましょう。
吉岡さんから渡辺氏へのリクエス トは「ファンの方々と一緒に盛り上がれるかっこいいRocK曲」。作詞は前作に続き吉岡茉祐 さん自身で、「渡辺さんの素敵なメロディーと曲の雰囲気を最大限に生かし、且つ『自分が好きなジャンル、だけどまだ挑戦したことのない曲』である、最強のロックをチョイスさせていただきました」と語っています。
M12. HELP ME!みゅーちゃん! / 高木美佑
作詞・作曲:桃井はるこ
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とにかくライブでみんなで一緒に楽しめるような 聴いたら思わず笑顔になっちゃうような
そんな、高まりソングが歌いたくて、お願いをしました!!!
憧れの桃井はるこ さんに、桃井さん楽曲だーっ↑↑↑ってなるような素敵な曲を作っていただき、
歌詞や音の中には、私らしさや私の好きなものをぎっしり詰め込んでいただけるだなんて…! ( ^ω^ )
本当に本当に夢のようなお話ですよっ!!!
私は幸せ者です。ありがとうございます。゚(゚^ω^゚)゚。*13
1996年生まれなのに2000年代のI'veとモモーイ とその他エロゲソングに造詣が深い高木美佑 さん、何者?
テーマは「とにかくライブでみんなとひとつになりたい!」。モモーイ ワールド全開のアキバ系 ソングとなっています。コール&レスポンスが楽しい。その上でストーリー性もあり、歌詞を高木美佑 さん本人の姿勢と重ね合わせるとグッと来るものがあります。パンフレットの桃井さんからみゅーちゃんへのメッセージ文もとても温かく、運命の導きを感じるコラボレーションです。
M13. わたしの樹 / 青山吉能
作詞:只野菜摘 、作曲:40mP
Piano:事務員G、Guitar:[TEST]、Other Instruments&Programming:40mP
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とてもこだわりました。 歌詞は只野菜摘 さんに、話し合いの末第5稿くらいまで書いていただいたり、 40mPさんとも直接打ち合わせをしたり、ディレクション もしていただいたり…、 (40さんにお会いするなんてほんともう激アツ案件よ生きててよかった) (ジェンガ とかScrap&Buildとか妄想スケッチとかシリョクケンサとか世代過ぎて) (ちなみに、WUGの1次審査はドレミファロンドを歌ったやつを送ったという豆知識。おさるさんのローンド!)
神と神との邂逅を果たした、神山吉能のおうたでございます。*14
東日本大震災 の復興支援を掲げたプロジェクトであるWake Up, Girls!で声優デビューし、熊本在住というハンデを背負いながら活動を続け、ようやく念願の上京を果たした直後に熊本が大地震 に襲われるという数奇な運命を背負った青山吉能 さん。そんな彼女が故郷を想って歌った曲です。この曲が初披露された2017年のソロイベでは、熊本地震 の日から始まり、自身の半生を振り返る一人芝居を演じました。
WUGのファイナルツアーでは、念願の熊本公演を実現。青山さんは、ワグナーに宛てた手紙を読み上げてくれました。「私はみんなが好きになってくれたこの街が、生まれ育ったこの街が……大嫌いでした」と。以下の記事に手紙の全文が掲載されているのでぜひご一読ください。
手紙の後、背景に熊本の映像を背負いながら歌った「わたしの樹」。途中、感極まって歌に詰まったとき、客席から少しずつ水色の光が灯り静かに背中を押した光景はとても美しかった。そしてラスサビはメンバー7人全員で合唱。熊本で聴いたこの曲を、私は生涯忘れることはないでしょう。
そんな青山吉能 さんは現在、熊本県 製作のアニメ「なつなぐ! 」に出演しています。故郷に錦、飾ってますね。
M14. 桜色クレッシェンド / 永野愛 理
作詞・作曲・編曲:やしきん
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完全神曲 。
やしきんさんに細かくお伝えしたのですが、 私の理想通りの最高の曲が出来上がりました。°(°`ω´ °)°。 早くフルで聞いていただきたい、 これからの季節にぴったりの曲なんです。 ピアノも桜のひらひら感が素敵ですよね…! 春っていろんな顔を持ってる季節だなって思っていて、 いろいろあるからこそ魅力的な季節で、 桜って綺麗だからこそ儚くて、 その中で頑張って行く背中を少しでも押せるような そんな思いを込めた曲です。 応援ソングになったらいいなって…。 全力で背中を押すような曲じゃなくて、 一緒に寄り添って歩んで行こうっていう そんな応援ソングとして聞いてもらえたらなって。 1人でも多くの人に届くといいなっ! まだ聞いてない方は、是非聞いて見てくださいねっ。*15
今年は雨と桜をイメージしてステージを作る事を意識しました。 何故雨なのかというと、 春はすごく爽やかで桜が咲いて華やかなイメージだけれども、 卒業、別れ、悩みなど逆の一面もあるのが 春の魅力だなと思っていて、それを出したいなって! 桜って満開に綺麗に咲いているのもいいけど、 雨に濡れている桜も儚くて魅力的だなって。 そんな春を全力で応援というより、 そっと優しく背中を押せるようなライブにしたいなって思ったんです。
その想いを乗せて作っていただいたのが、
『桜色クレッシェンド』*16
やしきん氏は「永野さんは明確なイメージを持ったプロデューサーでした」と語り、永野さんが上記のような世界観や「バンドサウンド を基盤にピアノを入れた切なくも前向きな応援ソング」と音楽面でも明確かつ簡潔なイメージをノートに記して打ち合わせの場に臨んでいたことを明かしています。
桜色クレッシェンドでは雨や別れの春、minority emotoionsでは秋に咲く桜と、ただ美しいだけの桜ではない姿を許容して歌にする永野愛 理さんの優しさ。僕は彼女のそういう部分に惹かれているのだと思います。
ちなみに、桜色クレッシェンドとminority emotionsは、WUGファイナルツアー千秋楽の仙台公演に組み込まれた永野さんの企画パートで歌われたため、全メンバーのソロ曲の中で唯一、公式のライブ映像が残って円盤化されています。そこでも、ツアー千秋楽という舞台で自分に与えられた時間を、彼女は「WUGの聖地・仙台」への感謝を伝える場として使ってくれました。まだブルーレイをお持ちでない皆様も、桜のように美しいその姿を、ぜひご覧いただければと思います。
M15. sweet sweet place / 吉岡茉祐
作詞:吉岡茉祐 、作曲:渡辺翔 、編曲:オダクラユウ
今回初音源化された1曲。「ソロ曲は毎年1人1曲」という慣例*17 を破り、2018年のソロイベ福島公演でサプライズ披露された吉岡茉祐 さんの2曲目。GloriAの制作に向けて渡辺氏から提案されたデモ音源の中で、吉岡さんがどうしてもこれを没にするのは勿体無いとお願いしてもう1曲作ることになったそうです。歌詞はソロイベ来場者特典の絵本(作・吉岡茉祐 )に記載されていました。
新曲、sweet sweet place の披露!
この曲も、渡辺翔 さんに作曲していただき、オダクラユウさんに編曲をお願いしました。
作詞は吉岡茉祐 。
何かの縁で繋がり、訪れた地が、本当のふるさとじゃなくても、また帰ってきたいと思える場所になっていたり…
楽しかったライブを思い返して、またライブに来たいと思ってもらえるなら、どんなに嬉しいだろうかと、考えながらかきました。
このまま歌わなくなるのは勿体無さすぎるくらい、好きな曲になったので…
みんなに聞いてほしい…
そして、いつかまた歌える日が来ることを信じて…。*18
その後、わぐらぶファンミーティングやファイナルツアー大阪公演でも歌われたため、ワグナーの多くは「聴いたことあるけど音源が無い」という状態に置かれていました。こうしていつでも聴けるようになったことは本当にありがたいです。
サビの最後の歌詞「おかえり」はみんなで声を合わせるのですが、吉岡さんの地元・大阪で叫ぶ「おかえり」は格別のものがありました。と言っても、これは単なる故郷への歌ではなく、WUGにおける「HOME」の概念に通じるものだと個人的には思っています。
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このように、ソロアーティストデビューしていないにもかかわらずセルフプロデュースの過程を覗き見ることができ、またクリエイターのアプローチを伺い知ることができたWUGのソロイベは声優オタクとしても楽曲オタクとしても最高に楽しいものでした。またイベント自体も7人の個性に溢れており、2018年は東北6県を舞台に開催するなど、数あるWUGのイベントの中でも特筆すべき魅力的な企画でした。
いまWake Up, Girls!は解散し、7人はそれぞれの道を歩みだしています。これから各々の夢に向かう中で、自分で世界観を組み立て生み出したこれらのソロ曲が、各人にとっての一つの指標になっていくのではないでしょうか。
いつか7人それぞれが辿り着いた舞台で、再びこれらの楽曲が歌われる日が来ることを期待しています。